ある離婚事件で

何年も前のこと、ある離婚調停事件に関わりました。


男性が不倫をしてしまい、女性が離婚を求めた事件です。

男性が何度も不倫をしてしまい、

女性は、もう耐えられないと感じ、調停を申し立てました。


(調停では、当日、当事者双方は、ともに裁判所に出頭します。

しかし、通常、顔を合わせることはせず、

裁判所の調停委員を通じてコミュニケーションをとることになります。)


男性は強気に離婚を拒み、

女性も譲らず、離婚を求めていました。

やがて、男性は離婚を認めました。

女性は、調停委員から「相手が離婚を認めた」という話を聞いたとたん、

たくさんの涙を流しました。

ただ、姿勢は凛としていたことを忘れることができません。


その涙の意味するものは、寂しさかもしれませんし、

終わったという安心感かもしれません。

両方かもしれませんし、他の理由もあるかもしれません。

自分が引き取る子供のことなども考えたのかもしれません。

他者がうかがい知ることなどできませんし、

もしかしたら、ご本人も分らないかもしれません。

彼女が離婚で幸せになるのか、誰も分りません。


私が今後できるのは、よく当事者の話を聞いて、

依頼者の意思を尊重しつつ、

長い目で見た依頼者、家族の幸せにかなうよう、

ご助力させていただくことです。


後日、とある施設で、遠くから、この女性を見かけました。

はしゃいで走り回る子供に追いついた姿でした。

やさしげな女性の表情は、目にやきついています。